リスク・オンとリスク・オフ
外国為替(FX)市場では、リーマン・ショック以降に為替の変動要因に「リスク・オン」と「リスク・オフ」という言葉が広く頻繁に使われるようになりました。リスク・オンを一言でいうと、過剰流動性(現金や預金)がリスクを取ってリターンを追求する動きになります。逆にリスク・オフは、リスクのある投資先から資金を回収するという動きになります。
通貨ではリスク・オンのときにはユーロ、ポンド、豪ドル、NZドルや新興国通貨が買われる半面、ドルや円が売られ、リスク・オフのときは逆の動きになります。ドルや円のことを資金調達通貨(ファンディング通貨)と呼ぶこともあります。
通貨以外ではコモディティ(商品)や株式もリスク投資先となっています。その一方、過剰流動性が増大した背景にはリーマン・ショックなどの危機のため、先進国による低金利政策や量的緩和、新興国も含む大規模な景気対策などがあります。
この結果、市中にあふれた行き場のないお金が常に利回りが良いところを求めて動いていることになります。
このため、どれか一つのリスク資産の価値が下がると連鎖的に他のリスク資産を売却する動きとなりやすいため、例えば株価が下落した場合には通貨ではユーロや豪ドルが売られやすく、円やドルが買われるやすいという動きになります。
こうした動きは時には不可解に見えるかもしれません。例えば先週7日の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想より増加していたにもかかわらず、ドルは売られ、ユーロや豪ドルが買われました。
素直に考えると、米国の経済指標が良いのでドルが買われると思いたいのですが、このときは、米雇用改善⇒株価上昇⇒リスク・オンという流れにつながりました。また、米シカゴ・マーカンタイル取引所が金や銀、銅の先物取引証拠金を引き上げたときには、商品価格下落⇒株価下落⇒リスク・オフとなり、ユーロや豪ドルが売られ、ドルや円が買われました。
まだしばらくは過剰流動性が解消されないとみられるため、ドルと円をグループにして市場がリスク・オンなのか、リスク・オフなのかを予測するのがいいのではないかと思います。
最後に「リスク・オン」=「リスク志向」、「リスク・オフ」=「リスク回避」のことです。